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咲紀は更衣室に着くと、雛がメイクポーチから化粧品を取り出し、咲紀にメイクをする。
「咲紀は可愛いからナチュラルメイクが似合うかもね。」
そう言って、下地を塗り、液体ファンデーションを塗る。パウダーのファンデーションし、ピンク系のチークをする。眉毛を眉毛ペンシルで描いて整え、まぶたにメイクを施していく。最後にピンクのリップを塗る。
「はい。いいよ。目を開けて。」と雛は鏡を差し出す。
「自分じゃないみたい。雛ちゃん、メイクありがとう。」
咲紀は受け取った鏡で自分の顔を映す。
「私にかかればこんなもんよ。」
雛は満足そうな顔で笑う。
「次は衣装ね。」とバッグから取り出す。「これ着たら教えて。」とそう言って更衣室を出て行った。
「これって…。」
咲紀は受け取った衣装を見て驚いた。
咲紀は衣装に袖を通していく。その衣装は膝までの丈のノースリーブのワンピース。少し広めに広げられた首回りは白色の薔薇のコサージュで装飾されている。胸元にリボンがあり、その中心に薔薇のコサージュが装飾されている。腰の後ろに大きなリボン。スカートはふわっと広がっていて、裾にレースが施されている。靴はベルトのついた白色の革靴。留め具部分がハートになっている。
「雛ちゃん。着がえたよ。」
咲紀は白色の透けているショートベールを手に持ったまま雛に声をかける。
「はーい。」
雛は更衣室の扉を開いて入る。
雛は咲紀を頭からつま先までゆっくり見下ろし、またつま先から頭まで見つめる。
「咲紀。可愛い。」
雛はそう言ってうっとりする。
「雛ちゃん。この衣装って。」
「え?何のこと?私、分かんないなぁ。」
雛はそう言って惚ける。
「雛ちゃん…。」
「コスプレだと思ってさ。ね?」
「でも。咲紀に伝えたいことがあるの。」
「何?」
「咲紀の気持ち、まだ言ってないんでしょ?」
「うん。」
「だからね、広瀬に気持ちを伝える勇気を持って欲しい。本当は広瀬、気持ち言ってないはずだったんだけどね。これを機に、ね?借り物競争が良い仕事したわ。」
雛はそう言って笑う。
「髪もやってあげる。」
サイドを三つ編みにして後ろでまとめ、下の髪を2つに分け、三つ編みをする。左右の三つ編みを交差して、ピンで留め、色とりどりの花のヘッドドレスをつける。
コンコン。
更衣室の扉を叩く音がする。「はーい。」と雛が答える。「開けるわね。」と扉が開く。
「瞬ちゃんママっ。」
「咲紀ちゃん。可愛いわ。」
「雛ちゃんも久しぶりに話すわね。」
「そうですね。」
「それにしても可愛いわぁ。」
弥生はうっとりと咲紀をまじまじと見つめる。
「私の手作り衣装ですよ。」
雛はそう言って微笑む。
「雛ちゃん。上手ね。」
「メイクも雛ちゃんがしてくれたんだよ。」
「そうなの。似合ってるわ。」
弥生は咲紀が持ってるベールに気付き、「貸して。あとでやってあげる。」と咲紀からベールを預かる。
「私、なんでこんな格好になってるの?」
「それはあとで分かるから。」
雛はそう言って微笑む。
トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル。
雛のスマートフォンに着信が入る。表示を見ると、立花だった。
「雛?そっちはどう?」
「こっちは入場門に行くだけだよ。」
「りょーかい。あと、他の連絡待ち。」
「分かったわ。また連絡して。」
「OK.」
雛は通話終了ボタンを押して、電話を終える。
「私も用意するわ。」と雛はバックから制服を取り出し、制服に着替える。
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