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瞬達は更衣室の扉を開けて入る。
「やるぞ。」
「何するつもり?」
立花は鞄からワックスを取り出した。
「まぁいいから。じっとして。」
立花はワックスを手に取り、馴染ませて、瞬の髪をいじる。サイドを束感が出るようにまとめていく。前髪を左から右に流すように浮かせアップバンクにする。
「よし。これでいいだろう。」と瞬に鏡を差し出す。
「ねぇ。なんで僕、髪をいじられてんの?それにアップパングになってる。」
「まぁまぁ。あと、これに着替えて。」
立花は衣装を差し出す。
「それ、そこにあったけど、人のものじゃないの?」
「あぁ、これ、俺が用意した。とにかく、これに着替えること。着替え終わったら教えて。」
そう言って更衣室を出て行った。
「僕までコンテストに出るの?聞いてないよ。」
そう言って立花が差し出した衣装を見る。
「え?」
瞬は驚いた。
瞬は疑問に思いながら、立花に言われた通り、衣装に袖を通す。白のウィングカラーシャツのボタンを1番上まで留めて、黒のバロックタイをつける。ボタン付きの黒のベストを着る。シルバーのノータックのパンツに、シルバーのショートフロックコート。
「立花。着替えたよ。」
「はいよ。」
立花は更衣室の扉を開ける。
「おっ。似合ってる。かっこいいよ。」
立花は瞬を頭からつま先までまじまじと見て、グッと親指を立てる。
「あ、ありがとう。でも、これ一体どういうこと?」
「お前に男になってもらう。」
「は?」
瞬は状況が飲み込めず、少し苛っとしたように答える。
「だーかーらー!」
コンコン。
更衣室の扉を叩く音がする。「はーい。」と立花が答える。「入るよ。」と扉が開く。
「お父さん。それにおじさんも。」
「穂積もいるじゃん。」
「広瀬君と中嶋さんのお父様が広瀬君と話がしたいって仰って連れてきた。」
「そっか。」
「瞬。よく見せて。」
幸成はじっと瞬を見つめる。
「かっこいいよ。」
「瞬君によく似合ってる。」
「あ、ありがとう。でもこれ一体どういうことなの?」
瞬は困ったような表情で幸成と紀明と立花を見つめる。
「それはね、2人に幸せになって欲しくて。それで橘と高木さん主導で計画を立ててたんだ。2人の後押しをしたいって。でも瞬、借り物競争で中嶋さんに気持ちを伝えたから、少し計画変更だけど。」
「咲紀に内緒の結婚式の計画を立ててくれたんだ。皆、2人に幸せになって欲しいと思ってくれているんだよ。」
「だからね、瞬。咲紀ちゃんにもう一度想いを伝えなさい。そして、咲紀ちゃんの想いを受け取るんだ。」
「はい。」
「父親としてお願いです。咲紀の想いをしっかりと受け止めてあげてください。」
「はいっ!」
瞬は真剣な目で幸成と紀明を見つめる。
「必ず咲紀ちゃんを幸せにしますっ!」
瞬は誓った。
立花は鞄から制服を取り出し、制服に着替える。スマートフォンを体操服のポケットから取り出し、アドレス帳から雛の名前を探し、雛に電話をかける。
「雛?そっちはどう?」
「こっちは入場門に行くだけだよ。」
「りょーかい。あと、他の連絡待ち。」
「分かったわ。また連絡して。」
「OK.」
電話を終え、スマートフォンを制服のパンツに仕舞う。
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