体育祭

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トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル。 凛は体操服のポケットからスマートフォンを取り出し、和希に電話をする。 「和希?こっちは準備できたよ。そっちはどう?」 「俺も牧師の服に着替えたし、あとはコンテストが終わるまで待って、穂積と長谷川と合流するだけ。」 「了解。」 「穂積と長谷川に連絡するわ。」 「お願い。」 そう言って電話を切る。 続いて穂積に電話をかける。 「穂積?そっちはどう?」 「松井。今広瀬達といて、コンテスト待ちだよ。」 「了解。もう穂積は放送席で俺と合流しよう。」 「分かった。スタンドマイクともう1本マイクを用意しよう。」 「了解。後程。」 そう言って通話を終了した。 和希は晴人に電話をかける。 「長谷川?そっちはどう?」 「こっちも進行役に話ができたよ。」 「いいね。放送席で俺と穂積と合流しよう。」 「分かった。」 「じゃあ後程。」 そう言って電話を切る。 立花は和希に電話をする。 「和希?順調?」 「穂積と長谷川と放送席で合流して、スタンドマイクともう1本マイク借りたら、終わり。」 「じゃあ、あとは、進行次第で瞬はいつでも出られるよ。」 「分かった。」 「雛に連絡して、入場門で待機してもらうだけだね。」 「高木さんに連絡よろしく。」 「了解。」 通話終了のボタンを押す。 晴人と慎はそれぞれ待機場所に戻り、そこに置いてある鞄から制服を取り出し、木陰に行き、制服に着替える。 着替え終えると、合流場所の放送席へと向かった。 立花は雛に電話をする。 「雛?そろそろ入場門に向かって。」 「了解。」 「うまくいくといいね。」 「そうだね。」 そう言って電話を切る。 立花はメッセージアプリでメッセージを全員に一括送信する。 立:準備はいい? 雛:入場門で待機中。いつでもいけるよ。 和:放送席で合流したから、いつでもいけるよ。 慎:同じく。 晴:同じく。 凛:放送席もOKだよ。 立:瞬と咲紀ちゃんのおじさん、ポジションについたら、凛。よろしく。 凛:了解。 咲紀の直前の出場者の番になる。 「エントリーNo.23、摘みたていちご。スイーツでいかが。パティシエール、早乙女(さおとめ)苺花(いちか)さん。」 手を振りながら、歩いて行く。時折スキップしたりして、前へと足を進めていく。ステージに立ち、四方向にポーズする。顔の横に人差し指を出して、首を傾げる。「俺のケーキ、苺を乗せてー!」と男の子が声援を送る。「苺花ちゃん、可愛いよ。」と女の子が声を出している。 「早乙女苺花さん。ありがとうございました。大きな拍手を!」 大きな拍手が巻き起こる。 咲紀、雛、そして弥生は、入場門で最終チェックをする。 「いよいよね。咲紀ちゃん。ベールをつけるわ。」 咲紀は腰を屈めて、弥生にベールをつけてもらう。 「これからどうなるの?」 「それは、これから分かるよ。」 雛はそう言って笑った。最後まで教えてくれなくて不安になる。 「そんな不安そうな顔しなくて大丈夫よ。」 弥生が微笑む。 「でも…。」 「大丈夫だから。ね?」 咲紀の両手を取り握る。 「ただいまからエキシビジョンを始めます。参加者は準備をしてください。」 瞬と紀明は立花の誘導で、退場門からトラック内を移動する。「おじさんはこの辺りで待っていてください。」と立花は紀明をトラックのカーブがかかる辺りで立つように指示する。瞬と立花はリレーのスタートラインから半周のところに立つ。 晴人と慎はマイクスタンドと手持ちのマイクを持ち、リレーのスタートライン、つまり中央に位置するセンターラインから真っ直ぐにステージに行く。スタンドマイクを瞬のいるところに設置し、晴人と慎はステージを中央の位置から瞬と立花のいるところまで移動させる。そしてもう一度、放送席に戻る。 慎は放送席に用意していた瞬の胸ポケットにつける薔薇のリースのブートニアを持ち、晴人は咲紀が持つブーケを持つ。晴人はスタートラインに立つ。 慎はブートニアを持ち、立花のいるところまで移動し、ブートニアを立花に差し出す。立花はブートニアを受け取り、瞬の胸ポケットにつける。「これでよし。」と瞬の胸をポンッと叩く。 「しっかり決めろよ。」 「うん。ちゃんと伝える。」 そう言って瞬は微笑む。 「立花。ありがとう。」 「どういたしまして。」 立花は胸に手を当て、浅くお辞儀をする。 「瞬。頑張れ。」 「頑張る。」 立花はセンターラインから放送席に戻って行った。 今まで進行していた声ではなく凛の声が聞こえる。 「エントリーNo.24、私の心は貴方のモノ。添い遂げてみせます。中嶋咲紀さん。」 今まで鳴っていた音楽が突然消え、有名なバラードの洋楽の曲が流れる。 「広瀬瞬。小さな頃から幼馴染の中嶋咲紀に恋をして、7年。中嶋咲紀。小さな頃から幼馴染の広瀬瞬に恋をして、7年。お互いに恋をしつつ、結婚しよう、その言葉から2人はすれ違う。温めた恋は愛となるのか。その結末を皆様で見届けていただきましょう。」 拍手が起こる。 入場門の黒幕が開かれ、周りはシーンとした。咲紀は雛に付き添われて歩き出す。遠くの方で紀明が立っている。 「パパ?」 咲紀は頭に疑問符を浮かべている。 そして今に至る。
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