体育祭

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戸惑いを隠せないまま、前へと進んでいく。 リレーのスタートラインまで行くと、慎がブーケを雛に渡す。雛はブーケを「はい。」と咲紀に差し出す。 「雛ちゃん。これどういうこと?」 「おじさんと瞬に任せて。」 そう言って雛は微笑んだ。 「雛ちゃん…。」 そう言って咲紀に付き添い、紀明のところまで送り届ける。 咲紀と雛は紀明のところまで辿り着く。 「咲紀。」 「パパ…。」 「綺麗だよ。咲良さんと見間違ってしまったよ。」 「どうしてパパがここにいるの?」 「お友達がね、計画立ててくれたんだよ。咲紀と瞬君に幸せになって欲しいと。」 「そうなんだ。」 「咲紀。咲紀の気持ちは瞬君に向いているんだろう?もう分かってるよね。ちゃんと気持ちを伝えて来なさい。」 「はい…。」 バージンロードを歩くように紀明の腕を持ち、歩いて行く。 カーブが終わるところまで一緒に歩き、足を止める。 「咲紀。ここまでだよ。パパの役目はここまでだ。」 「パパ…。そんなこと言わないで。いつまでも一緒にいてよ。」 咲紀は震えた声で言う。 「咲紀…。ありがとう。咲紀がいて本当に幸せだ。生まれてきてくれてありがとう。愛してるよ。これだけは言わせて。子どもの間は、まだパパと一緒に過ごそう。パパに咲紀を守らせて。」 「パパ…。ありがとう…。パパが私のパパでいてくれてよかった。私も愛してるよ。いつまでも私のパパだよ。」 「咲紀。行っておいで。」 「はい。」 紀明は微笑んで送り出した。 咲紀はゆっくりと歩んで行き、徐々に歩くスピードを上げる。瞬は両手を広げ、待っている。 もう駄目だと思った。どうしてもあの腕が欲しい。 気付いた時にはもう走りだしていた。 咲紀は瞬に飛びついた。瞬は咲紀を抱き留め、くるりと回る。その瞬間スカートがふわりと翻る。瞬は咲紀をゆっくり降ろす。 「咲紀ちゃん。」 「瞬ちゃん。私、」 「待って。僕に言わせて。」 そう言って瞬は咲紀を制止した。 「僕の気持ちを聞いてください。」 「はい。」 瞬は息を大きく吸って吐いて呼吸を整える。
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