第1章

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第1章

 1  元資源採掘用小惑星マグナ0088は文字通り資源採掘のためにセブンスマグナ社が買い取り、他の惑星系より太陽系へと運び入れた小惑星である。  現在はセブンスマグナ社とブラナー個人の共同所有物となっており、権利としては約六割をブラナー個人が所有している状態にあった。正確には既に資源採掘の終了した部分をブラナーが所有し、残りの部分をセブンスマグナ社の所有としていた。このように特殊な分割ができるのも当事者がセブンスマグナ創立者であり現会長であればこそなのは言うまでもなかった。  惑星、小惑星を問わず、所有者が登録されている場合、それに付随して周囲の空間も所有者の管理下に置かれることになる。これによって、それらの空間には他人が許可なく侵入することができなくなるのだ。惑星の大きさによって領域の広さも変わってくるが、実際には更にその外側にも接続領域というエリアが設定されている。接続領域内では、関係者以外のスペースシップは単純通行のみが認められており、それ以外の行動は一切できなかった。  ただ、惑星を所有することは固定資産税が掛かるうえに周囲の空間には空間使用料が発生する。それは大きな惑星であればあるほどに高額なものになった。要するに惑星を個人所有することは資金面で非常に難しいことであったのだ。  ブラナーがマグナ0088を共同所有物としたのは資金面というよりも安全面を念頭に置いたからであった。実際、価値の下がった小惑星に掛かる税金等はブラナーの個人資産から考えれば取るに足らない程度であったのだ。それよりも安全性を考えた場合、大企業が所有しているという事実だけで馬鹿げた事を考える奴らを寄せ付けないこともあったのだ。  元々、この小惑星はブラナー自身が現地まで出向いて購入を決めた物件であり、後々の個人所有を考慮しての選択であった。今でこそマイカのために使用してはいるが、最初から自身の趣味のために手に入れていたのだ。  では、なぜ最初から個人で購入しなかったのかと尋ねられれば、それは楽であり税金対策になるからであった。実際、惑星を所有しようとすれば審査だの書類だのといったかなりの面倒事を背負いこむ必要があり、それが個人所有ともなれば更に審査は厳しくなるのだ。
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