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「そういう話しないの?」 「……うん。向こうも自分から言わないし、あたしも聞かない」  前は、彼が書いてるものに興味があった。  分かりにくい人だから、どんなことを考えているのか知りたい気持ちだったけど、結婚してからは怖くなってやめた。  彼の書くものが全くの創作なのか事実や願望が入ってるのか、妙に勘繰るようになってしまって、今でいえばあの編集者さんみたいな女性がもし書かれていたら、っていう怖さがあって、手に取れなくなってしまった。 「聞いてあげなよ」 「聞くと嫌がる」  彼女は笑った。 「面倒くさいねえ。まあ、うちもだけど」 「旦那さん元気?」 「うん。4月に部署変わって、そしたら多分ストレスで5キロ太って」 「体、平気?」 「特に病気とかはないけど、さすがに最近は気にしてウォーキング始めたのね。それはいいんだけど、一緒に行こうってうるさいのが嫌。こっちだって母のことでいろいろ疲れてるのに巻き込むなって感じで」  ……ん?  一緒に行こう、って――――どっかで聞いた覚えが……。 「どうかした?」 「あ、ううん。何でも。そうだね。実家のことだって、まだ大変だよね」 「ホントだよ。うちも構って欲しいんだろうけど、20代とか付き合い始めのデートならまだしも、この歳になってお腹出た旦那と一緒に歩いたってさ。子供のことくらいしか話題もないし」 「……あ!」 「なに。さっきから」 「あ、ごめん。えっと……ここ数日引っ掛かってた謎が今解けて」
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