エピローグ

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 見上げると、彼は眼を伏せ苦笑いする。 「分かってるんだよ。いろいろ、きみを傷つけたり悲しませたりしているのは。でも、僕はこういう性分だから、偽りたくはないんだ。それは逆にきみへの不誠実に思えるから」 「……ん」 「だから、10年後も多分僕はこのままだけれど、それでも一緒に……隣に居てくれるかい。ついでに言えば、きみは何か気にしていたみたいだけれど、僕は他の誰にもそうして欲しいとは思わないよ」  ……分かって……。  まあ、当たり前だよね。  人の心に疎かったら、小説なんて書けないだろうし。 「あたしは……」  流産したのは、10年前。結婚して間もない頃。  出血も痛みもかなりひどくて、一週間くらい寝込んで。  その時ばかりは、この人もさすがに余計なことは何も言わず、毎日お粥を作って、心配そうに顔を覗き込んで。  結局、それからしばらく体調も戻らず、仕事の方でも急に後輩が辞めたりして忙しくなったのもあり、彼も。  もともと繊細な人だから、私以上に思うところがあったのか何も言わず、家族が増えることはなく今に至った。
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