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もしかしたら、違う未来もあったのかも知れないけど、でも少なくとも、今のところ自分の人生に後悔はしていないし、本気で別れたいと思ったことも一度も無い。
「……貴方がいいなら、いいよ。10年後も、そのあとも。ついでだから付き合うよ」
「史……」
言いたいことはあるけど、また頭に来た時に言えばいいか、と思った。
「それで。今日の夕飯は?何にするの」
「え?ああ……何にしようか。何か食べたいものあるかい」
「……希望言っていいなら、茄子とキャベツのにゅうめんが食べたいんだけど」
「ああ。いいね。きみにしては……」
言いかけて、咳払いして言い直す。
「ええと、それなら素麺とキャベツはあるから、帰りに茄子を買って……それと、たまには西瓜でも買おうか。きみ、好きだったろう」
「ん」
「この前、小玉のいいのが出てたから、あるといいんだけど」
いつも優しいわけじゃないし、口うるさい姑みたいだし、面倒くさいひとだけど。
多分10年後も、そのあとも。死ぬまで隣に居るんだろう。
『面倒くさいひと』了
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