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その夜はお風呂に入っても、最近見つけた笑える動画を視ても。
気分も晴れないし、彼が何を思い出させたいのかもさっぱり分からない。
けど『教えて』と言ったところで、絶対に言わないだろう。
雨の音が思考を淀ませて、私はパソコンチェアを軋ませて天井を見上げる。
結婚記念日でもない。付き合った日でもない。
子供は居ない。流産した日でもない。
お互いの誕生日でも、もちろんない。
考えているうち、クーラーで乾燥するのか喉が渇いて来たので、飲み物を取りにキッチンへ行った。
微妙な小説家の彼は大抵夜に執筆しているので、この時間に顔を合わせることはほとんどない。
当然、夫婦のそれもなく、最後は去年の秋。
それも、私が同じ課の男性と泊まりの出張に行ったのを疑って
「同僚と良からぬ遊びでもしてきて、僕の知らない痣なんか刻んでやしないかと思って」
って無理やり剥かれたついで、って感じだった。
酷いといえば酷いけれど、こっちもそれまでご無沙汰で寂しい気持ちはあったし、向こうも半分ネタか分からないけどレスっぽいことは言ってたし、ひとつ間違えばってところはあったから、あながち的外れな行動でもなかった。
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