1/1
前へ
/16ページ
次へ

「明日、友達と会うから。出かけるから」  二日後の金曜、夕飯どきに言うと 「友達って誰だい」 こっちを見ずに彼は言った。  献立はカレーとサラダ。私が作った。 「ほら、沙紀。先月お母さんが亡くなったんだけど、四十九日も無事に終わったから、たまには気晴らしにお茶付き合ってもらえないかって連絡来たから」 「……行ってらっしゃい」  それきりお互いに黙って食べて 「ご馳走様」 立ち上がって彼は一言。 「このルーは油が強くて味も良くない。次は違うのにした方がいい」  ……カレー食べたくて作ろうとしたら切らしてたから、コンビニにあったプライベートブランドので済ませたら、これだ。 「分かった」  いつものことで悪気じゃないし、と思っていると、言い捨ててそのまま自分の部屋に行ってしまった。  ……普段は、嫌味は言っても、あれは言わずにいられない病気みたいなもので、それとは関係なしにお茶は淹れてくれるんだけど。  例の件も思い出せないのに明日友達と出かけるって言ったのが、そんなに気に入らなかったんだろうか。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加