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「ねぇ。覚えてるかい?」    梅雨のある日のリモートワーク中、突然旦那がドアを開けて言った。  オンライン会議中じゃなくて良かった。 「……何の話?」 「……分からないなら、いい」  思い通りの答えが返ってこなかったからか、ぷい、と彼はドアを開けっ放しに廊下を戻って行く。 「ねえ、何度も言ってるけど、通話してる時もあるから仕事中はノックして欲しいんですけど」  声を投げかけても返事はなく、階段を下りていく足音がした。  溜息をついて、私はドアを閉めるために立ち上がった。  今朝から、何か様子はおかしかった。
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