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「本人に問いてみろ。」
ジャンの視線の先に目を向けると、そこにはマントを羽織ったレオが立っていた。
ドレン帝国との戦いに参戦しているのだとばかり思っていた。
レオはベッドに座る私の前まで歩いてくると、うやうやしく頭を下げた。
「この度は我国の利益のために貴女に多大なるご煩労を被らせてしまった。心から謝罪する……本当に、申し訳なかった。」
これは、どう受け止めればいいのだろう……
丁寧とも他人行儀とも取れるレオの態度に返す言葉を失ってしまった。
お互いに探るような微妙な空気が流れる中で、母が大丈夫~?と親しげにレオに話しかけてきた。
「レオ君ママを助けるために、お城にまで乗り込んできてくれたんだよ。」
レオがお母様を……?
あまりにも母が普通に馴染んでいるから疑問に沸いてこなかった。
なぜ遠くにいたはずの母がここにいるのか……
スティルス陛下が生きていると知られたら、真っ先に母は殺されていたはずだ。
「でもお城の怖い人達に見つかっちゃて。ママ、剣で襲われたんだけどレオ君が庇ってくれて、血がいっぱい出たの。」
マントの下に目をやると、肩に巻かれた包帯に血が滲んでいるのが見えた。
私の目線に気付いたレオは、大した怪我じゃないと言ってマントで傷口を隠した。
敵の真っ只中に飛び込んでいくだなんて……
そんな危険なこと、死んでしまっていたかもしれないのに……
「ミリアムは自分の命と引き換えに母親を守ろうとしたんだ。その人を死なせてしまっては、俺はミリアムに顔向けできない。」
……レオ………
アビが母にお散歩をしましょうか~と言って庭へと出かけていくと、ジャンも用事があると言って席を立った。
部屋にはレオと二人だけになった。
「ミリアム……俺は今からかなり恥ずかしいことを言うから心して聞けよ。」
そう言って照れたようにコホンと咳払いするレオは、私が知っているいつものレオだった。
「最初にミリアムを見た時、あまりにも美しすぎて戸惑った。その後も、どう接していいかがわからなかった。」
自分の悲運を受け入れるのが当たり前になっていた。
「確かに、計画のために仲の良い夫婦を演じろとは言われていたが、俺はそんな器用な性格じゃない。」
運良く悪いことから逃れられても、その先に待っているのはさらなる絶望しかないのだと……
「ミリアムに伝えた愛は全部本物だ。だから、俺の前から消えようだなんて思わないでくれ。」
失うことへの恐怖に怯えて生きてきた。
望むものはどうせ手に入らないからと、なにも抗うことなく諦めていた………
「いてもいいの……?」
こんな私でも……なにかを叶えようと願ってもいいんだ。
なにも知らなかった私に……
「誰が反対しようが必ず守る。今度こそ、嘘偽りなく愛し抜くと誓う。だから……」
……レオが教えてくれた。
「このまま……一生俺の花嫁でいてくれ。」
大好きな人のそばにいるだけで……
「私も………」
こんなにも、幸せなんだってことを──────……
「ずっとレオのそばがいい。」
レオから差し伸べられた手を、確かめるようにギュッと握った。
温かい……夢じゃないんだ。
もう、気持ちを抑えなくてもいい……
本当の気持ちを伝えてもいいんだ──────……
涙がボロボロと溢れてきた。
泣きながらだったからはっきりと伝わったかは自信がない。
でもやっと、レオに言うことができた……
私も、愛していますっ……て──────……
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