味方なんていない

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「仕事仕事仕事って!新妻を放ったらかしにするだなんてけしからん夫ですよ!!」 「アビ……声が大きいから……」 今日もレオが朝から晩まで仕事だと知ってアビが発狂した。 「だって結婚してから10日間ずっと寝に帰るだけだなんて酷すぎます!ミリアム様だって初夜を思い出して体がうずくでしょっ?」 「アビ……本当に声が大きいから……」 その初夜もしてないのだとはとても言えない…… レオは皇太子という立場にありながら13歳の頃から騎士団として戦争にも積極的に参戦していたのだという。 今は公務の(かたわ)ら、その頃のメンバーとともに自警団を結成して街の治安の維持にも務めていた。 レオは朝早くに出ていき夜も遅くに帰ってくる。 一応同じベッドで寝てはいるけれど、疲れたと言ってすぐに寝てしまう…… 床入れの儀式で仲違いをして以来、レオとの間には気まずい空気が流れていた。 私があんな態度をとってしまったから嫌われてしまったのだろう……… 距離を置いたからか私の気持ちもだいぶ平静を取り戻してきた。 危うく、一時の感情に流されて大事なものを見失うところだった。 これで、いいんだ───────…… 「レオナルティス様はパトロールだとか言っておきながら浮気をしてるんじゃないでしょうか?」 「そ、それはないんじゃないかな。だってこの国では不倫をしたら即打首なんでしょ?」 アビいわく男なんて浮気をする生き物らしい。 現に貴族達の中では変装をして愛人宅に通ったり、侍女として雇ったりしてよろしくやっている輩も多いのだという。 「尾行して確かめてみましょう。城の門番は私の知り合いなので御安心を。」 「知り合いって……フィアンセなんでしょ?」 アビは故郷の島から彼氏と一緒に出稼ぎに来ており、結婚資金を貯めている真っ最中なのだと聞いた。 私に指摘されるとアビはアタフタと慌てだした。 「わ、私のことはいいですから!レオ様はいつも昼過ぎに街に出かけるようなので、今から急いで支度をしましょう!」 あのレオが女性関係でそんな器用なことをしているとはとても思えないのだけれど…… でも…… 私のことを心配してこんなに親身になって考えてくれるアビの優しさが、すごく嬉しかった。
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