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ネグリジェに着替えてから花の香りのついた手水で手や顔を清め、ベッドに座ってレオがくるのを待った。
床入りの儀式とは結婚式を終えた男女が初めて一夜をともにすること……つまり、結婚初夜のことである。
プライベートな空間で行なわれる儀式であり、守るべき礼式や作法は特にはない。
ただ、第三者が寝室を監視するという決まりがあった。
これは無事に性交が行われたかということと、女性が処女であったかを確認するためなのだという。
「全員今すぐ出て行け!切られたいのか?!」
寝室へと入ってきたレオは、ずらりと並ぶ監視人達を見るなり全員を追い出した。
「そんなことをしてもよろしいのですかっ?」
「人前でできるかっ!頭がおかしいのかっ!!」
私までレオに怒られてしまった。
おかしいもなにも……そういう決まりなのだと習ったとしか言いようがない。
でも……仕切りの向こうで聞き耳を立てる程度だと思っていたから、あんな近くで大勢にマジマジと見られるのはとんでもなく恥ずかしいなとは思った。
にしても───────……
誓いの口付をなんなくこなしていたから、床入れの儀式も大丈夫そうだと安心していたのだけれど……
どうやらあれは順序立てた作法があったからできたようだった。
先程までの威勢はどこへやら……
離れた位置でガチガチになって固まっているレオを可愛いと思ってしまった。
でも私だって似たようなものだ。
しかしこのままお互いに恥ずかしがっていては一向に儀式が始められない。
ここは年上である私の方から動こう……
レオのそばまで近付いていって胸にあるリボンを突き出した。
「レオ……どうぞ。」
「どうぞって……?」
「このヒモをピッと引っ張って頂けたらスルっとはだけますので。」
「お、俺に脱がせろっていうのかっ?」
確かにお手を煩わせるのも失礼だ。ならば自分で解こうと思ったらストップ!!と大声で止められた。
「………とりあえず、水をくれ。」
「………はい。」
サイドテーブルに置かれたピッチャーからコップに水を注いでレオに手渡した。
自分で脱ぐのもダメ、脱がせてもくれないんじゃあ一体どうしろと言うのだろう……
思い切ってレオに尋ねてみた。
「あの、服を着たままスルのをご所望ですか?」
私の質問にレオはブフォとむせた。
コップの水を全部吐き出したんじゃないだろうか……
その慌てっぷりに笑っちゃいけないんだろうけど笑ってしまった。
「ミリアム、おまえ……俺が年下だからって舐めてるだろ?」
「そんな、とんでもありまっ……きゃっ!」
怒らせてしまったのか勢いよくベッドに押し倒された。
仰向けになった状態で、覆いかぶさったレオに完全に固定されてしまった。
「俺も男だってこと、その体にたっぷりと教えてやろうか?」
さっきまでの初心な様子とはまるで違う、別人のような妖麗な表情にドキリとしてしまった。
どうしよう……心臓が尋常じゃないくらいうるさくなってきた。
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