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“いい歳してハメを外しにいくな”と両親に頭ごなしに怒られて反対された小学校の同窓会帰り。 「ねぇ、覚えてる?昔、五月雨神社の降臨祭に侵入したの」 十数年ぶりに旧友たちと飲み明かした帰りの車内で、顔を赤らめた太一の代わりにハンドルを握る朋美が唐突にそう話しかけた。 「ん?あ~……そうだっけ?」 呂律が回りきらない口調でまったりと答える太一に、朋美は「も~う!」と頬を膨らませながら夜風に当たれと言わんばかりに助手席側の窓を乱暴に開ける。 太一と朋美は、太一が中学進学で県外に引っ越していくまで、よく悪戯して遊んでいた悪友だった。降臨祭に侵入したのも、そんな数ある悪戯の内の一つ。 「ねぇ、せっかくだから今からあの神社、行ってみない?」 「は?」 朋美の唐突な提案に太一は思わず語気の強い素っ頓狂な声が出た。腕時計はもう深夜の一時を指している。 「いいでしょ?別に!減るもんじゃないし」 「あ、おい!」 朋美は昔と変わらないような茶目っ気のある笑みを浮かべると、グンと進行方向を変え、ハンドルを持たない太一はただ流れに身を任せるしかなかった。 * * * 「あ~!ほらぁ!懐かしいね、この狛犬」 朋美は酔っているのだろうかーーと、太一が思えるほどテンションが上がっていた。逆に太一は酔いも醒め、ダラダラと朋美の後を追うように歩く。 「この狛犬の裏に隠れてさ、降臨祭に向かう大人の列を見張ったんだよね!私の親も、太一のお父さんもここ通って行ってさ……」 「…………。あ~……」 太一は朋美のその言葉でようやくピクリと体が反応し、細切れだった糸の記憶が一本だけ少し繋がった感覚になる。 「そう言えば……親父の姿見つけて、俺、思わず嬉しくなって飛び出して……」 「そう、そう!」 「それで……」 えらく驚いた顔の親父と目が合って……それからどうしたんだっけ……? 「パリーンッ!!」 「……ぅおっ?!」 昔の自分を回想している脳内に、急に朋美の大きな陽気な声が鳴り響き、思わず太一は声が出た。 「何だよ、お前!急に……ビックリすんだろ!」 鼓動を早めた太一の訴えにも、朋美はニヤニヤと悪びれる様子もなく笑いながら続けた。 「ねぇ、覚えてる?太一くんが飛び出して何が起きたか?」
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