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真理子は、木の影に隠れている奥山を見つけた。
「誰にも見つかってないでしょうね?」
「あぁ」
目深にかぶったキャップから、チラッと真理子を見て、奥山は言った。
「金は?」
「はい、これよ、あなたどこに逃げるつもり?」
「そんなことお前に言っても仕方ないだろ」
「それもそうね、じゃ、ここで別行動ね、もし私が捕まったら、あなたのこと話す事になるけど、まぁ、うまく逃げなさい」
奥山は、フフッと笑った。
「そんなことさせるわけがないだろ、俺はそこまで頭は悪くない、もうお前は必要ないからな」
そう言って、バックから何かを取り出した。
「な、何する気?やめて!」
奥山は、サバイバルナイフを手にしていた。
「お前がいなくなれば、俺は安心して逃げられるからな、悪いが死んでもらう」
真理子は、後退りした。
奥山は、ジリジリと真理子に近づく。
「やめろー!やめるんだ!」
遠くから声が聞こえた。
拓馬だった。
「お前!広小路さんを殺した奥山だな!真理子さんに何する気だ!」
「西山さん!」
真理子は、後退りしながら拓馬の方へ走って行った。
奥山は、拓馬を睨み付けた。
「ほほぉ、飛んで火に入る夏の虫ってことか、ちょうどいい、西山拓馬!お前も一緒に殺してやる!」
「やめろ!広小路さんをあんな目に合わせておいて!俺は許さない!」
奥山は、大笑いした。
「ふざけたこと言うな、お前は知らないんだな、言いかよく聞け!お前は広小路のガキの復讐のために利用されただけなんだよ!そのとばっちりが俺に全部来たんだ!お前のせいでもある!だから、お前は罰を受けるんだ!」
そう言って、サバイバルナイフを振り上げた。
「やめてー!」
拓馬の後ろから沙代が飛び出してきた。
「うっ..」
沙代は腕から血を流していた。
「邪魔するな!」
奥山は、両手でナイフを持ち替え、そのまま沙代に向かって来た。
沙代をかばうように、拓馬は前に立った。
「うぐぅっ」
奥山と拓馬がぴったりとくっついていた。
「きゃぁー!」
「やめてー!」
沙代と真理子が叫んだ。
拓馬のお腹から、止めどなく血が流れていた。
「なんで?拓馬さんまで?広小路だけじゃなかったの?あなた、何を考えてるの!」
真理子が、恐る恐る奥山に近づいていった。
「うるせぇ!お前の知らない事があるんだよ!関係の無いことだ!元はと言えば、お前が俺をそそのかしたのが発端だ、俺達は共犯者だ、もう終わりだ..逃げきれる訳がない...」
そう言って、奥山も少しづつ真理子に近づいく。
血がついたナイフを真理子に向けながら、ゆっくり歩いて行った。
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