悲しみと幸せ

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【明和銀行 宮古島ツアー】 「先輩、なんかそのまんまのネーミングで、つまんなくないですか? ってか、今日も残業決定ですね、打ち込み終わりそうもないです」 「先方が決めたことだからな、俺達がとやかく言うことじゃない、お前、喋ってないで手を動かせ」 「まぁ、そうですけど」 「社長クラスばっかだから、ネーミングよりもツアーの中身なんだよ、まっ、俺達の腕の見せ所だな」 たまに、変なやる気を起こす大田原。 それを冷めた目で見る桜子。 「ところで、先輩、私、なんか変な予感がするんです」 パソコンを打つ大田原の手が止まった。 「おいっ!もうやめてくれよ、お前のその【予感】ってのは、今まで、ほぼ当たってるんだ」 「ですよねー、私って凄いんですよね、やっぱり」 時々変な自信を持つ桜子。 いや、自信ではなく、確信に近かった。 美代子のラインが鳴った。 朔太郎は、電話をしていた。 【明日、いつものホテルで】 美代子はニンマリする。 【オッケー!】 と一緒に、ウサギがハートを沢山出すスタンプを打った。 【当分、二人きりになれないから、明日は楽しもうな】 ニタニタが止まらない美代子。 【うん!明日ね】 クマとウサギが抱き合うスタンプを打った。 「何ニタニタしてんだよ」 朔太郎に言われて、ハッと我に返る美代子。 「え?あ、あぁ、友達の投稿よ、子供の写真があまりにも可愛くてね」 「そうか、俺達もそろそろ子供欲しいよな」 「そうね、でもまだもう少し、二人っきりを楽しみたいわ」 口ではそう言っていたが、心はそうではなかった。 (このままでもいいんだけどな、遊べなくなるし) 美代子には、男がいたのだった。
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