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息を切らし現場にたどり着いた涼平は、目を疑った。
「なんなんだ、これは!」
拓馬が腹から血を流し、傍らで沙代が腕から血を流している。
そして、真理子が流木を振りかざし、今にもナイフを持った奥山に襲いかかろうとしていた。
「やめろー!真理子!」
真理子はビクッとし足を止めた。
振り向き、微かな声で言った。
「涼平..ごめんね、愛してる」
真理子の目から一滴の涙が流れた。
「真理子!俺のところに来い!こっちに来るんだ!さあっ!」
涼平が手を広げて叫んだ。
真理子は泣きながら首を横に振った。
その瞬間、真理子の顔が強張り、「うぐっ」と口から漏れた。
奥山が、真理子の後ろにぴったりとくっついていた。
「やめろー!」
涼平は、何が起きたのかわかっていた。
真理子は奥山に刺されたのだ。
「来るな!来たら、心臓ひとつきにするぞ!もう何もかも終わりだ、この女も終わりだ、全て終わりだ」
奥山は、背中から血を流し意識が朦朧としている真理子の腕を持ち引き摺りながら、叫んだ。
涼平は走り出そうとした。
すると後ろから肩を掴まれた。
「林さん、ここにいなさい、あとは私達に任せなさい」
畑山刑事だった。
「いいか!容疑者は人質をとっている!ゆっくり囲むように接近しろ!もし人質に危害を加えそうになったら、やむ終えないが撃て!人質にあたらないようにしろ!」
警官が、散り散りになった。
「来るなー!来たらこの女に止めを指すぞ!」
奥山は、真理子を引き摺り海へと入っていく。
「くそ!あのまま自殺するつもりだ!」
畑山は、意を決して拳銃を両手で持ち、真正面から奥山に近づいて行く。
奥山は、畑山に気付き、真理子に向けてナイフを振りかざした。
その瞬間、パーンと乾いた音が浜辺に鳴り響いた。
沙代、涼平、意識が朦朧としていた拓馬までもが、その音にビクッとした。
「なに?!なんなの!」
やっと現場にたどり着いた桜子も銃声の音に驚いていた。
「容疑者確保!」
畑山が、血の流れる奥山の腕を締め上げて言った。
沢山の警官達が集まり、奥山を押さえつけた。
「くそっ!なんで死なせてくれないんだ!」
泣きながら奥山が叫んでいた。
「もうこれ以上、誰も死なせんぞ!罪を認め、償え!お前の言い分もちゃんと聞いてやる、お前も辛かったな」
畑山が、奥山の肩をポンと叩きながら言った。
「うわあぁぁぁぁ!」
警官達に取り押さえられた奥山が、砂まみれになりながら、子供のように泣きじゃくっていた。
「畑山さーん!」
桜子は砂浜を歩き、手を振り畑山に近づいていった。
その横を担架をもった救急隊が追い抜いて行った。
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