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窓の外はオレンジ色に染まっていた。
「はっ!」
桜子はスマホの着信音で、起きた。
画面を見ると【先輩】の文字が出ていた。
「もし..もし..?先輩?」
「お前、その声は寝てたな?」
「ちょっと、ウトウトしてました、アハッ」
「アハッじゃねーだろ、あれからどうした?」
桜子は起き上がり椅子に座った。
「畑山さんに詳しく調べてもらうようにお願いしました」
「そうか、それならもっと詳しく裏付け取れそうだな、兎に角、お前が動き出すと何か起こるから気を付けろよ」
「大丈夫ですって、今回のことがハッキリしても罪に問うことは難しいですからね、直接手を下した訳じゃないですから」
「それもそうだな、今日は早く寝ろよ、じゃーなっ」
「はーい、また連絡しまーす」
桜子はスマホをテーブルに置いて、窓の外を眺めた。
すると、トントンと部屋のドアを叩く音がした。
(ん?誰だ?)
「はいっ?」
ドアの側まで行く桜子。
「あ、僕です、林です、涼平です」
「あ、はい、ちょっと待って下さいね」
ドアを開けると涼平が立っていた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、みんな病院ですし、ホテルには僕と神山さんだけで、もしよかったら夕飯一緒に食べませんか?」
桜子は目を丸くした。
「是非!御一緒させてください!」
「よかった、では、下のレストランで待ってますので」
そう言って涼平はお辞儀をして去っていった。
桜子はポニーテールをほどき、髪をとかしてから、またキュッと結び直した。
そして、スマホを手に取り誰かにLINEを送った。
「よしっ!準備完了!」
独り言を放って、部屋を出た。
レストランの中は、1組の宿泊客が座っているだけだった。
(そうだよね、あれだけの有名な人が亡くなったとなれば知れ渡るし、キャンセルも出るよね)
奥の席に座る涼平を見つけた。
桜子に向かって手を振る涼平。
「神山さーん、こっちです」
軽く会釈して、手を振りながら歩き出す桜子。
「ワイン頼んだので、飲みませんか?」
テーブルには深紅色のワインの瓶とワイングラスが2つ置かれていた。
「はいっ!もちろん!」
涼平は桜子のグラスにワインを注いだ。
グラスをカチンと合わせて、ワインを飲む二人。
「空きっ腹だとすぐに酔っちゃいそうです、さてと何を食べようかなぁ」
桜子はメニューを覗き込んだ。
(あれ?ん?)
目を擦る桜子。
「やだぁ、あたし酔っぱらったみたいです..文字が..ボヤけ..て..」
「桜子さん、大丈夫ですか?色んなことに首を突っ込みすぎて疲れてるんじゃないんですか?」
(ん?なに?)
桜子の意識が遠のいていった。
メニューに顔を伏せて、桜子は眠ってしまった。
「あなたがいけないんですよ、桜子さん」
と言いながら、涼平は微笑んでいた。
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