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「うぅ~ん...」
目を開けると桜子はベッドの上に寝ていた。
伸びをしようとした瞬間、手と足に違和感を感じた。
(縛られてる!)
桜子はやっと気付いた。
ワインを飲んだ後からの記憶が無かったのだ。
(グラスをしっかりチェックしてなかったわ、私)
後悔したが後の祭りだった。
「目が覚めましたか?」
声の方に目をやると、涼平がソファーに座っていた。
「涼平さん!何でこんなことを?」
「それは桜子さんが1番わかっているのではないですか?」
「何のことでしょうか?私にはさっぱり」
涼平はスクッと立ち上がって怒鳴った。
「嘘をつくな!色々と調べてたじゃないですか?調べなくてもいいことなのに、そのままにしておけばいいことなのに!」
(やっぱり..)
「涼平さん、落ち着いてください、本当に何の事だかわからないです、勘違いしているのではないですか?」
「西山さんの病室で何を聞いていたんですか?大田原さんに何を調べてもらってるんですか?あの刑事にも、そして朔太郎にも嗅ぎまわってましたよね?」
「確かに拓馬さんにも、大田原先輩にも、畑山さんにも、中村さんにも、気になっていたことを聞きました、でも真相まで辿り着くことは出来てません、Mという人物の存在までしかわかっていないんです」
涼平はギョッとした。
「もしかして、桜子さんはそれを確かめるために、こうなることをわかっていて?」
桜子はペロッと舌を出した。
「危ないことはしないようにと言われていたんですけどね、はい、だいたい予想はしていました」
涼平は愕然としていた。
「桜子さんはMという人物が、俺だと予測していたんですね?」
「はい、でもその確証がないので、調べてもらっているんです」
涼平は、窓の外を見てため息をついた。
「涼平さん、私はMという人物に罪を問うことはしません、ただ何故?どうして?という真実だけが知りたいんです」
「どうしても知りたいのですね?やはり、僕が知っている事を全てお話しなければなりませんね」
「あ、あの、その前にこの縄をほどいてもらえませんか?逃げたり襲ったりはしませんので」
桜子は訴えかけるような表情で言った。
涼平は首を横に軽く振りながら答えた。
「いや、話が終わるまではそのままで、申し訳ありません、殺したりしませんから」
「わかりました、では、お話聞かせてください」
そう言いながら桜子はベッドサイドのデジタル時計をチラッと見た。
そして、何かを確証し、涼平の方を見た。
「私は何を聞いても驚きませんから、どうぞゆっくりお話聞かせてください」
涼平は、大きく息を吸ってゆっくり吐き出し、思い出すかのように話し始めた。
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