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秘密と現実
拓馬と沙代は、仏壇に手を合わせていた。
「沙代ちゃん、ありがとうね、みのりも喜んでるわ」
「ここに来ると、みのりちゃんに会えるから、なんかホッとするんです」
「あなた達、結婚しないの?」
「母さん!突然何を言うんだよ」
沙代は赤ら顔になっていた。
「やだぁ、おばさんったら」
「私もみのりもそれを願ってるわよ」
拓馬は、みのりの写真を見つめた。
(みのり...)
「明後日から宮古島よね?」
「おばさん、いいんですか?私が代わりに行っちゃって」
「うん、いいのよ、私、飛行機ダメなのよ、電車で行けるところなら、喜んで行くんだけどね」
「母さん、飛行機ほんとにダメだもんな」
みのりの屈託のない笑顔の写真が、3人の会話を見つめていた。
帰りの車の中。
「拓馬、宮古島では、何も無いわよね?」
「そうだといいな」
「お願いだから、変なことは考えないで、ねっ」
「あぁ、なるべくそうするよ」
沙代は、心配そうに拓馬の顔を覗き込んだ。
拓馬はそれに気付き、沙代の頬にキスをした。
女は、スマホを手に取り何かを見ていた。
パスワードは予測していた通りの番号だった。
(やっぱり、そうだったのね、やっぱり...)
シャワーの音がしなくなった。
咄嗟にスマホを切り、元にあった場所に置いた。
腰にバスタオルを巻いて、涼平が出てきた。
スマホを盗み見していたのは、涼平と同じ融資担当で恋人の新堂真理子だった。
「真理子?どうした?」
「え?なんでもないわよ、私もシャワー浴びてくるわね」
そう答える真理子の顔は、少しひきつっていた。
(絶対に許さない!)
勢いよく、シャワーのお湯を出した。
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