エピローグ

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エピローグ

「お前、またそんなに買うのかよ」 「えぇ、男よりスイーツ、花より団子ですから」 大田原と桜子は、西山拓馬の店【mûrir (ミュリール)】にいた。 「いつもありがとうございます」 奥から拓馬と沙代が出てきた。 「やめられませんので、拓馬さんのスイーツは」 桜子はペロッと舌を出し言った。 涼平のことは、拓馬にも朔太郎にも真理子にも話していなかった。 「拓馬さん、沙代さん、また来ますね」 「えぇ、またのご来店お待ちしております」 軽く会釈して、大田原と桜子は店を出た。 「おい、お前さ、あの事話してないのか?」 「はい、話してません、ってか話せませんよ」 「まぁ、そうだな、涼平さんは美代子さんとの不倫と彼女の死を苦に自ら命を絶ったことになってるからな、遺体も見つかってないんだろ?流されちゃったのかな」 「えぇ、そうですけどね、私がMの存在を突き止めなければ涼平さんは死なずに済んだのかもしれないんです、だから私のせいでもある、なのでその事と涼平さんの事を1人で一生背負って生きていこうと思ったんです。あ!そうなんですよ、潮の流れとかで結局涼平さんの遺体見つからなかったみたいです」 大田原が桜子の背中をポンッと叩いた。 「1人じゃないだろ?俺も背負っていくぜ」 「痛っ!そんな思いっきり叩かないでくださいよ!でも、ありがとうございます、ですよね、先輩も畑山さんも知ってるんですものね」 「あぁ、アイツか、畑山ね、そうだなアイツもだな、仕方ねぇな仲間に入れてやろう」 桜子はフフッと笑った。 「なんでそんなに畑山さんの事、目の敵にするんですか?」 「目の敵になんかしてねぇし、別にいいだろ!」 大田原の頬が少しだけ赤らんでいた。 「あ!噂をすればなんとやらですよ、ほら」 遠くから手を振りながら畑山が近づいてきた。 「お二人とも!元気ですか?ご無沙汰してます!桜子さんとはあの時以来ですね」 「えぇ、あの時は泣きじゃくるばかりで本当にすみませんでした」 「ワイシャツがびっちょりでしたからね、ハハハ」 大田原がすかさず聞いた。 「なんだよ、それ、お前泣いたのか?」 「はい、畑山さんの胸を借りておもいっきり泣いちゃったんです」 「チッ!へぇ、そうか」 チラッと畑山を見る大田原。 畑山は大田原の視線を感じて、少し居ずらそうだった。 「大田原さんもお元気そうですね、あ、そうだ、奥山も真理子さんも情状酌量の余地有りで刑も少し軽くなりそうです、まぁ、人を殺してしまっていますからね」 桜子は寂しそうな顔で言った。 「そうですか、あの二人、被害者でもありますからね、Mに操られていたということでは」 「ですね、最初から林涼平は、全てが終わったあと自ら命を絶つつもりだったんだと思います、桜子さんの推理のせいではないですから」 「そうですね、きっとそうですね」 桜子は空を見上げ言った。 「あ、そうだ、桜子さん、朔太郎さんの事知ってますか?」 「え?何かあったのですか?」 「朔太郎さん、子供向けのサーフィンスクールを始めたんですよ、たぶん【みのりちゃん】の事を忘れないために、背負って生きていくために」 畑山は、ブログのようなものを桜子に見せた。 「うわぁ、凄い人数ですね、朔太郎さん素晴らしい!」 「会社は部下にまかせて、サーフィンスクール事業を展開していくみたいです」 写真には子供に囲まれた朔太郎が満面の笑みで写っていた。 「きっと拓馬さん聞いたら喜ぶと思います」 「そうですね、僕から報告しておきます」 「それでは、私達会社に戻ります、先輩、行きましょ」 すねたような顔で大田原が言った。 「はいはい」 「また桜子さんの推理を楽しみにしています、今回は大活躍でしたね、助かりました、今度食事にでも行きましょう!では!」 「はいっ!是非!連絡します!」 「俺は行かねぇ..」 大田原の頭をバシッと殴る桜子。 「もうっ!子供じゃないんだから!」 「畑山さん、またー!」 3人は笑い合い、それぞれの方向へ歩いていった。 桜子のストレートヘアが、木枯らしに吹かれサラサラと揺れていた。 遠くからそれをじっと見つめる人物がいた。 そして、呟いた。 「桜子さん、ポニーテールの方がお似合いです...よ」      ~終わり~
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