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「輝血さん」
男の元へ向かう黒髪の男、輝血は背後から呼び止められ立ち止まる
「何?」
「お父さんから電話です」
輝血は振り向き電話を受け取り耳にあてる
「もしもし」
ポケットから煙草を取り出し咥えると火を付ける
「ああ、もしもし輝血?今少しいいかな?」
「大丈夫。どうした?」
輝血は近くに転がる椅子を立てると腰を掛け、煙を吐き出す
「輝血はアビス地区を知っているかい?」
「あー、何年か前に食屍鬼に潰された場所?」
「そうそう。暫くは立入禁止区域になっていたらしいんだけど、数ヶ月前に復興作業が終わったらしくてね。ただ、不気味がって誰も住もうとは考えないらしく今は僕達の同業者の巣窟になっているらしいんだよ」
輝血は煙を吸い込むと、ゆっくりと吐き出す
「ふぅん。巣窟、ねぇ。じゃあ警察とか龍が来るんじゃねーの」
「警察は来ない。来るとすれば龍だろうね。それでも滅多にアビス地区には顔を出さないらしくてね」
「どうして?アイツらは俺達みたいな人間捕まえて拷問するのが好きなんだろ?」
「ははっ、確かにそうだね。でも奴らはアビス地区に到達出来ないでいる」
輝血は地面に灰を落とし、口に咥える
「アビス地区に到達出来ない?他の奴らが暴れてるのか?」
「アビス地区は巣窟。彼達も守りたいんだよ。だからアビス地区の周りの地区で悪さをしているらしいね。」
「んなもんアビス地区に突入してとっ捕まえりゃ早い話だろ」
「そうもいかないんだよ。誰彼構わず捕まえる事は出来ない。現行犯逮捕が出来ればそのまま龍の屋敷に連れ帰ることも出来るが、とにかく証拠が無ければ奴らは手出しが出来ない。証拠を掴むためにアビス地区へ行きたくとも周りの地区で幾つもの犯行が行われている。それを蔑ろにもできない」
「ふぅん。で、お父さんは何が言いたいの?」
「アビス地区に新たな拠点を構えたい」
輝血は煙を吐き出し足元へ煙草を落とすとそれを靴で踏み火を消した
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