想い

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「記憶喪失ってェのは、ふとした時に戻ったりするのかい?」 「そうですね。人によりますが、輝血さんは強いショックを受け抜け落ちてしまったようです。ですがその抜け落ちた欠片は近くに転がっています。輝血さんがそれに気付き手に取った時、全てまたはその一部の記憶が戻る…と言えますね。」 「へェ。」 「中には、気付いていても手に取ろうとしない、それは触れてはいけないものだと思い込む人もいるようです。記憶が戻ることを本人が拒否すれば誰も元には戻せません。…キョウさんや周りの方から聞いた輝血さんしか知らないですが、思考的にはこっち寄りかもしれませんね。」 「そうかい。そりゃァいい。」 「それに彼は身体的外傷も多く見受けられます。これから最低でも一週間は無理をさせないようにしてください。」 「分かったよ。有難うねェ。」 白衣を着た男が部屋から出ると、頭を抱え苦しむ輝血の隣に座る。 手を伸ばし輝血の頭に触れると、唸っていた輝血の声が小さくなる。 「輝血ィ。お前は良い子だ。」 キョウがそう言うと輝血はゆっくりと目を閉じる。 「…ゆっくり休みなァ。」
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