蜘蛛の糸

想い

「輝血はもう龍の生活を忘れている。思い出させる必要は無い。」

酒場に集まったレイや颯、そして他の仲間達が黙って聞く中、椅子に座っていた懍が立ち上がる。

「龍の生活を忘れたって…じゃあかーくんはお父さんや食屍鬼になった家族の事も忘れてしまったって言うんですか？」

「……どうだろうねェ。どこまでを覚えているとかは輝血にしか分からない。それに俺はそれについて本人に聞くつもりもない。その会話がきっかけで全てを思い出したとしたら…輝血はどうなると思う？」

「どうなるって……苦しむ…と思います……」

「そうだなァ。それにアイツはあの事故を自分のせいだとも思うだろう。塞ぎ込んでしまう可能性が高い。そうなりゃここでは生きてはいけない。俺もいつまでも役に立たない人間の面倒を見るってのは御免だ。」

「じゃあ俺達はかーくんにどう接したら…」

「ん？単に龍で生活していた時のことを話さなければ良いだけだろ。」

「そうですけど…」

懍は落ち込んだ様子で椅子に座り直す。