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「別に記憶があろうが無かろうが関係無いやろ。それにお前らはこれから、思い出話に花を咲かせる暇も無いんやし。」
「それでもなんか引っかかるって言うか…」
うー。と唸り顔を伏せる懍を見てレイが大きくため息を吐く。
「自分だけが覚えてて、大好きな人はそれを忘れてる。辛いかもしれんけど、そうなってしまった以上受け入れるしかないんや。」
「……分かってはいるんですけど…」
「顔合わせたら辛なるんか?」
「それは分からないですけど、ちょっと気は使うかもしれないです。」
「ふーん。じゃあ俺の所に来たらええやん。」
「え!?」
懍がガバッと顔を上げるとその勢いに驚いたレイは思わず笑ってしまう。
「別に同じ地区内やし会いたい時には会える。ただ今までみたいに常に一緒って訳じゃないからそこまで気も使わん。落ち着いたらキョウの所戻ればええやん?なぁ、キョウ。」
「俺はなんでもいいよ。」
「やって。どうする?俺は別に来ても来んでもどっちでもええで。自分で決めや。」
「レイさんの所……うーん………」
「なんやねん?」
「いやぁ、キョウさんもレイさんもよく知らないからなんとも言えないんですけど…ちょっと怖いというか…その…」
「はぁ?絶対俺よりキョウの方が怖いし冷たいし優しくないやん。俺とキョウだけで比べるんやったら俺一択やろ。」
「うーん…」
懍が腕を組み悩んでいると、颯が懍の肩を叩く。
「上の人間はどっちもどっちだからそこは考えずに、輝血との事だけを考えて決めたらいいよ。」
颯の言葉を聞いたレイは、颯の耳をつかみ引っ張る。
「どっちもどっちってなんやねん?」
悪戯に笑いながら耳を引っ張るレイと、すみませんと謝りながらも少し楽しそうな颯の姿を見た懍は考えることを辞める。
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