33人が本棚に入れています
本棚に追加
/781ページ
月に一度顔を合わせることになった輝血と懍は毎月、お互いの近況報告をしあった。
回数を重ねるに連れて仕事内容は酷なものになっていった。
輝血の目付きが変わり始めた。
カブト時代の輝血に似ている。が、その時よりももっと鋭い目だった。
懍はそれを嬉しく思う。
輝血から見た懍も、前より頼もしく映る。
そんな二人を少し離れた場所から見守るキョウとレイ。
「なんか毎回毎回自分の子を見合いさせてる気分で落ち着かんわ。」
「なんだい?レイには子供がいるのかい?」
「いやおらんけど。気持ちの話やん。キョウはなんか思う事ないんか?」
「んー、そうだねェ。……そろそろどこかしらのタイミングで記憶が戻ったとしても耐えられる程には育っただろうから特に心配も何もねェなァ。」
「キョウが付いてくる理由はそれやったもんな。ほんで俺は待ち時間の暇つぶし相手。」
「はっは、人聞きが悪いなァ。俺らは俺らで話せばいいだろォ?」
「ほぼ毎日のように夜一緒に酒のんでんのに何を話すことがあんねん。」
「それもそうだなァ。」
「……あ、あるわ。話す事。」
「ん?」
「龍の別部隊かなんか、ほら近くに置いたってやつ。あれ撤退したらしいで。」
「へェ?やっと諦めたかい?」
「警察の話やと、最後の最後まで粘ってたらしいけどな。国のお偉いさんが放し飼いしてた龍を籠の中に入れたんやと。」
「籠の中…ねェ。元々ずっとあの組織は籠の中で暴れていただけだろうよ。」
「まぁそうなんやけど、今まで以上にこっちには関わってこれんってことや。やっとほんまの意味での自由やで。長かったなあ。息詰まって死ぬかと思ったわ。」
「ははっ、それでも自由に暮らしてただろォよ。」
「いやぁ、こっちは金貸しもやってるからなぁ。取り立て行かすのも一苦労やったわ。」
「警察はともかく龍に見つかれば連れて行かれるもんなァ。」
「そっ。一般人のフリさせて外出して、帰ってくる時もそう。出入りする客一人一人に声掛けてるようやったら取り立ても行かれへんかったし、そこだけは助かったけど。」
「……じゃあ懍はこれから外に行くのかい?」
「せやな。もう外に出しても大丈夫やろ。それにこの地区はそもそもが龍の担当地区外。だいぶ離れた場所にあるしこの近辺やったら龍と出くわす事もないやろうし、龍は今まで通り龍の地区でお仕事頑張ってって感じ。」
「はっは、それもそうだなァ。じゃあこれからが大変だなァ。懍に取り立てなんか出来るのかい?」
「出来る出来ひんとちゃうくて、やらなアカンねん。でも一つ問題があるとしたら、懍は顔が可愛らしいからな、どう頑張っても怖さが感じ取れんかったんやん。でもさぁ、最近の懍はちょっと凄味が出てきたと思わん?」
「………うーん。」
「え?一年前と比較してみ?こっち側に染まってきてるやろ」
「うーん、そうだねェ。親バカってのは相手するのが面倒くさいねェ。」
「はぁ?何が親バカやねん。それにそんなん言い出したら、ウチの輝血の方がって顔してるキョウも親バカやろが」
「別にそんな顔してねェよ。」
「いーや、してました。親バカ同士お互い褒め合って仲良くしよや。」
「……はいはい。」
最初のコメントを投稿しよう!