想い

36/40
前へ
/781ページ
次へ
この国を脅かした 食屍鬼 という名の生き物は、一人の少年の人生に大きく関わり苦しめる存在となった。 その少年は青年へと成長し、この国の平和を背負う事となった。 昔から知る大人はこう言った。 「彼が彼として生きていられたのはたったの八年間。それ以降は自分の復讐、そして国の為に生きている。誰よりも長い時間を国に捧げてきたのだ。…誰が彼の失敗を責められようか?」 食屍鬼が現れ終止符を打った。 そこで終わっていれば良かった。 だが彼はまだ気付いていなかった。 彼を憎む人間が、着実に彼を捕える糸を張り巡らせていることに。 彼は仲間を引き連れ、まんまとその糸に足を絡め取られてしまった。 絶望。怒り。哀しみ。憎しみ。苦痛。 彼を支えていた光が、一つ、また一つと消えて行く。 守りたかったんだ、この光を。 手を伸ばせどそれには届かず、消えゆく姿をただじっと黙ってみることしか出来ない彼は、自分に失望した。
/781ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加