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ロメオが探しているのは親の仇だ。
三年前、両親が何者かに殺害された。この家で。
一代で商社を築き上げた両親は、つまるところ成功者だった。ロメオが物心ついた時にはすでに裕福で、市内一等地のこの場所でどこよりも大きな豪邸を建てた。
殺害されたのは大嵐の夜。
土砂降りの中、用事が出来てたまたま寄宿学校から戻ったロメオは、夜遅かったが帰宅した挨拶をしようと両親の寝室を訪ねた。
両親は寝る前に二人で少し酒を飲んでから寝るのだ。そのためまだ起きているかもしれないと思った。
ノックをしたが返事がないので薄く扉を開けると、すでに部屋は暗く、灯りは枕元の間接照明だけのようだった。
もう寝てしまったかと思ったロメオだが、扉を閉めようとした瞬間、異変に気付いた。
大雨なのに、窓が開いて風が吹いている。
そして、それに混ざった血のにおい。
目をやると、両親のベッドには横になった人物が二人、その上にかがんだ人物が一人。
ごうごうという、風の音。
思わず、ひゅっと息を吸うと、肺に、雨と血のにおいが広がる。ロメオはすぐに息をはいた。
するとベッドの上の人物がこちらに気付き、顔を向けた。黒の目出し帽。暗くて瞳の色までは分からない。
怯んだロメオは一歩下がった。しかしその人物が背を向け逃げ出そうとした瞬間、逃がしてはならないという本能に火が付いた。
ロメオは飛びかかるようにベッドに近付くと、間接照明の乗った机に置いてあるアイスペールからアイスピックを掴み、不審者に振り上げた。
ロメオが襲ってくると思わなかったのだろう。
反応が遅れた不審者は体を捩りロメオの強襲をかわそうとしたものの、アイスピックはその右脇腹辺りをかすめた。
脇腹への傷に対して相手が息を詰めたことに、ロメオは気付いた。
もう一回、と再度アイスピックを振り上げたが、不審者は今度こそ、身を翻して窓から逃げた。
わずかな争いだったのに興奮から息が上がり、ロメオは不審者を追おうとはしなかった。
手に下げたアイスピックからは血が滴っていた。
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