雪が降ったあの日

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「ねぇ、覚えてる?」 二つの光の玉が、男に向けて問いかけてくる。 「……」 男が光に向けて答える。 美しい雪景色の中で………。 緑に囲まれて美しい街。 あたりには高い山々、鏡のように透き通った湖。 ここは、リザール。 観光名所としても有名なこの街は、いつも人で賑わっている。特に、冬の景色は美しいの一言に尽きる。普段は、奥行きのない新鮮な緑に覆われているが、冬になるとその景色は一変する。街全体が、白く閉ざされ、人々の胸に静寂さを与えてくれる。 街は観光客と商人で溢れている。メインストリートでは、連日奇術団がサーカスを行なっているおかげで大賑わいだ。 街の中心の大きな時計台には、展望台まで設置されおり、リザールの壮大な景色を一望できる。 時計台から西側を覗くと、そこには大きな湖がある。 そのほとりには、小さな木造建ての家が一軒立っていた。 作れられて相当年月が経っているようだ。外見は家というよりは別荘のような作りだ。 木で出来た外壁は雨風の影響により、所々剥がれており、煉瓦造りの屋根もあちこち割れていた。 玄関にが鍵がかかっていない。中には木製の机が部屋の中心に置かれており、それを囲うようにして三つの椅子が並べられている。 奥には、火のついた暖炉が設置されていた。その前で暖をとっている男が一人。男の名はバートン。
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