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その人間は斎藤によく似ていた。いや、斎藤そのものと言っていい。顔はやや老け、疲れが見える。着ているスーツは安物で、厳重にマスクをしている。
重役たちは安物スーツの男性の方に近づこうとする。
「待て。」
静かな、かつよく通る声で、長谷川がそれを制す。「いやー、はるばるよく来たね!」
唯一その声が届かなかった斎藤が安物のスーツの男性に近づいていくと、ハグを求める。
しかし、安物のスーツの男性はそれに驚いたように距離をとった。
「……?」
ハグを求めた斎藤はきょとんとする。
「斎藤君。ああ……2015年の斎藤君。少し離れて」
長谷川は、斎藤を手招きすると、安物のスーツの男性と一定の距離をとって質問する。
「君がよっぽど重篤な花粉症にかかったことを祈りますが、未来で何かあったんでしょう?」
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