甘く痺れる罠

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「王太子様?!」  突然現れた我が国の王太子は、茶目っ気たっぷりに唇の前で人差し指を立てる。  静かにするようにとおっしゃりたいのかしら。  悪戯好きで有名な彼は、よく国王陛下に叱られていると聞く。と言っても、子どもなわけでもなく、来月成人を迎えるはずの17歳。私と同い年である。 「こんな可愛い子がお城にいるなんて知らなかったよ。名前は何と言うの」 「ジュリエッタでございます」 「そうなんだ!僕はロメオって言うんだよ。古典文学ではジュリエッタとロメオは一目惚れをする運命にあるんだよ」 「そして、共に自刃する羽目になりますよね」 「おっと、教養があるね。さすがは、皇室付きのメイドは違うな」  しくじっちゃったかな。  私は何より、子爵令嬢の身分でありながら、平民に擬態してお金を稼いでるなんて、知られたくはない!
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