甘く痺れる罠

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甘く痺れる罠

 普段は立ち入らない書庫のお掃除をするように、メイド長に頼まれた。  うちの家にあったら、今夜の晩御飯を買う為のお金に変わってしまいそうな、とんでもなく文化的価値のある書物が並んでいる。 「素晴らしいわ。こっそり読んでしまっても構わなかったりするかしら」  こんなに蔵書があるのに、言いつけられたのは、私だけ。 「ジュリエッタ! 棚の上までよろしくね。必要だろうと思って踏み台持ってきたわ!」 「ありがとう! メアリ」  同僚メイドが気を利かせてくれて、気が付いた。これは今日だけの仕事じゃ終わらない! 「さてさて、どこから手をつけますか」  独り言を言っていると、カチャリと音がした。  出入り口となるたった一つの大扉を見ると、そこには滅多にお目にかかれない御人(おひと)
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