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紳士淑女の夜の作法
「カルナリアの踊り子はショーが成功に終わった後、舞いを踊れる喜びを性と死の神様、タナスに捧げるの。その時には身に纏っていた衣装を脱いで、お客と共に特別なショーを完成させるの」
「特別なショーって言うのは、その……」
メアリも母と共に、お客と踊っていた過去があった。十五年前の和平協定の締結により、メアリの母は幼いメアリの手を引いてインゴアドに帰国した、平民として。
「私もかつてはタナス神を信仰していたの。十三になる歳には母と舞台に立っていたわ。場所は飢餓で苦しむ子どもがたくさんお腹を膨らませている、地獄を絵に描いたようなスラムだったけどね」
長く続いた帝国との戦争により、国の土は痩せ細っていた。芋類でさえ育ちが悪い。それなのに、帝国の資本主義に迎合したせいで、貧しい者はより貧しく、領民を支える真面目な貴族も没落し、成り上がったのは王室と悪どい取引きをする商人だけである。
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