2/3
前へ
/106ページ
次へ
僕が話しているのは、僕という存在についての説明だ。 僕は、大きく育ったクスノキが、人間たちに崇められて生まれたものだ。当時の人間たちは、守護神、土地神として、僕を「大樹の神」と呼んでいた。 もっとも今では、そう呼ぶ者も、ほぼいない。 崇められていた樹自体は、今でも(そび)えているけれど、何せ山奥に生えている。昔は通り道だった此処も、今では、他所に通りやすい道が作られて、すっかり放っておかれているのだ。 忘れられるのは当然だった。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加