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光を認識できないロボット
夜空に輝く星が私達の目に届くころには、実はすでに燃え尽きている、かもしれないらしい。
私は、両親と娘という構成の三人家族に購入された、家事労働用のアンドロイドだ。最新型ではなくて中古品。私を迎え入れた家族は私に万能の機能を求めなかった。私の中枢部分が最新であれば、動きや理解が早かったり、同時にこなせる家事が増える。沢山仕事ができる。だが、最初に私に与えられた仕事は、お嬢様の話し相手だった。
お嬢様は病弱だった。学校へはあまり行けなかった。友達も少ない。ベッドで寝ていることが多く、私は枕元でずっと話を聞いていることが多い。会話を理解して応答する機能は、私は得意ではないので、返事をし、時折確認をするように返答をするだけだ。だが、お嬢様は話を聞いて貰って、満足し、幸せそうに眠る。
私のカメラアイに映るお嬢様は寝ているだけに見える。顔色が悪かったり、身体のあちこちには発疹が出ていたり、咳が多かったりしているが、私にはそれらの症状を同時に処理して、どういう病気なのか、余命がどれくらいなのかを、いまこの時点で導き出すことができない。
あるときお嬢様がベッドから居なくなった。奥様曰く病院に入院したとの報告を受けた。話し相手の任務が終わり、日々の家事をこなしていると、奥様がやってきて、「娘が会いたいと言っているの」と言われ、病院へ連れていかれた。
お嬢様は真っ白な部屋であらゆる管と機械に繋がれて眠っていたが、私がやってきたのを察したのか、薄目を開けて私を見、笑った。その後すぐ、そばにあった機械から、ピー、と単調な音が鳴って、奥様は泣き崩れ、旦那様は奥様に寄り添った。
お嬢様が病院に移ってから一週間。私は変わらず家事をしている。いつものように、家全体の掃除をして、最後にお嬢様の部屋に入って、お嬢様の洋服をご用意しようとしたところで、私の中枢が、やっと計算を終え、ひとつの答えを導き出した。
――お嬢様はもうこの世には居ない。
奥様が悲痛な顔をして私を見ていた意味を、私はやっと理解した。私は奥様に告げた。
「奥様。私の役目は終わったように思えます。お暇を頂けませんか。私をお嬢様のところへ連れて行ってください」
「……。そうね。いままでありがとう」
翌日。
アンドロイドのメンテナンスサービスの者がやってきて、私の首筋にある電源ボタンに手を伸ばす。
最期の瞬間までに、私の瞳に星の光が届いて、本当に良かったと感じている。
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