渚の街のモノクローム(1) ~邂逅編~

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「ちょ、バ……」 小娘が上から覆いかぶさるように体重をかけてきたものだから、バランスを崩し後ろに倒れてしまった。  小娘のぷにゅどころか、体の全部がオレの体重にプラスされて地球の重力に引かれて落下していく。  ちょうど背中のあたりに大きな水たまりがあったらしく、オレと小娘は水たまりの中にずぶぬれになって座っていた。  しこたま背中を打ったせいか、息ができず言葉も出てこない。先に正気に戻ったのは小娘の方だった。「あら?ここうちじゃない?」 とかのんきなことを言っている。  小娘の部屋に通されたオレは、帰るのを小娘に止められ、今シャワーを浴びている……「何やってんだろ、オレ」  先ほど階段で起きたことを、小娘はすぐに察知し理解したようだった。「私のためにこんなにしておいて、そのまま帰らせるわけにはいかない」 と半ば強引に連れ込まれて、今ここにいる……。  シャンプーも借りて洗っていると、さっき小娘からしたいい香りが広がった。  その後オレは小娘の赤色のジャージと短めのTシャツ姿になった。さっきまで着ていた服は泥まみれになって玄関のとこに置いてある。  ジャージの裾が短く、足首が丸出しだった。「どうしてこうなった」 と、オレは小さな声で独り言を言った。「フフフッチャンスね」 クロがまた無責任なことを言い出した。「あの子は今、シャワーを浴びてるわ。これ、フラグ立ったでしょ」 「ちょっと待て!なんのフラグだ?この状況はまずいんじゃないの?」 「シロが言うには、あの子、だいぶ覚悟してるみたいよ?」  おれは30にして、やっとモテ期がきたか?とも思ったが、「イヤイヤイヤイヤ、オレは住民に優しい駐在さんなんだぜ?こんなふうに小娘を頂いてしまったら、これからの仕事に差し支えるだろ?」  今回は、小娘には悪いけど逃げの一手しかないと思い、玄関にあったオレの泥だらけの服を抱えて逃げることにした。
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