3 土曜出勤

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3 土曜出勤

土曜。朝7時半。 やはり顔がパンパンに浮腫んでいた。 そりゃ仕方ないよね? 昨日、よく考えたらまあまあお酒飲んだしね。 鏡に映る自分の浮腫んだ顔に辟易しながら、とりあえず化粧をする。 今日は土曜日だから、いつもよりカジュアルな格好で出勤。 今日は大抵の社員が休みにしている土曜日で、出社しているのは一部の人間だけだ。 この会社は週休二日制ではあるのだが、日曜日ともう1日を選べるようにしてある。家庭持ちの人間は大抵、土日を休みにしているのだが、独身組は結構バラバラに休みを取っている。ただ、どの部署も最低一人は土曜出勤をする事が推奨されているから、独身者は自ずと土曜に出勤する事になるのだ。 まあ、家庭持ちは家族サービスの日も必要だものね。 私が所属する部署は、私と後二人が独身で普段ならこの二人の同僚が土曜出勤している。だが、たまに彼らが土曜を休みたいとなった時、私が土曜に出勤する事になるのだ。まあ、今週は水曜に既に休みをもらっているし、土曜といって何か用事があったわけでもないから別にいいのだけれど。 それに、土曜日の会社は人間が少ないし、電話もほぼ掛かってこない。だから平日よりやり易い1日なのだ。 とりあえず会社に行く途中、コンビニに寄って、ビタミン系の飲み物とカフェイン飲料を買って出社した。 「おはよう中野さん。今日は中野さんが土曜出勤だったんだね」 てっきり今日は一人だと思っていたから、オフィスに入ってびっくりした。 「あ・・おはようございます佐藤さん。今日出社される日だったんですね・・」 「あー・・・いや、本当は今日は休みの予定だったんだけど、急遽来週頭に必要な書類ができて、それ作りに来たんだよ」 そう言って頭を掻きながら、先輩の佐藤がコーヒー片手に席に着いた。 私も席に着いて、さっき買ってきたカフェイン飲料を飲む。 一人だと思っていたから、少し気を抜いていた。 気合を入れ直す。 先輩の佐藤は、この部署のエースで仕事が早いと評判の人だ。 私生活は謎に満ちているが、どうもお子さんがいるらしい。だから基本的には土日を休みにしているはずだ。 年齢は31歳で確か、私のと同期だったはず。 今日のカジュアルな格好もなかなかスタイリッシュで、実は社内で人気がある。 PCを見つめて真面目に仕事をこなす姿もなかなかカッコいい。 私は、今日出勤してちょっと良かったと思った。 昼ご飯時、佐藤先輩にランチはどうするか聞かれた。 普段なら、社内食堂で食べるところなのだが、今日は土曜で生憎社食はやっていない。そんな時は近くのお弁当屋さんから出前か、もしくは近くのご飯屋さんに行くのが定例になっている。 正直、私はまだ食欲がなかった。 昨日のお酒が後を引いている・・・。 私が返事をしあぐねているのを察したのか、先輩が近くのうどん屋にでも行かないかと誘ってくれた。 うどん・・・それなら食べたいかもしれない。 そう思ってその誘いを受ける事にした。 会社の並び3軒目にそのうどん屋はある。 所謂昔ながらのうどん屋さんで、食券を買うシステムにはなっているが、なかなか美味しい。 土曜だというのにまあまあ混んでいた。 佐藤先輩は肉うどん。私はきつねうどんを頼んで食べ始めようとした時だった。 「佐藤先輩!ここ相席してもいいですか?」 会社の同期の田村が汗を拭き拭き入ってきたのだ。 田村は『あ!中野もいたの?珍しいね、土曜出勤』などと言いながら、もう先輩の隣に座っている。まあ混んでいる昼飯時なのだから仕方がない。 すぐに田村の頼んだ、うどんと親子丼のセットが運ばれてきた。 三人で黙々と食べる。 田村は同期だから最初の研修の時に一緒になった。 スポーツマンの田村は爽やかで営業担当している。恐らく今日もまたどこか外回りでも行くのだろう。例のプロジェクトがどうとか、こうとか、佐藤先輩と話しながら、豪快に親子丼を食べていく。 後から来たのに、田村は私より先に食べ終わっていた。 「田村、今日は仕事何時に上がり?たまには飲みにでも行くか?」 佐藤先輩が田村にそう尋ねた。 「え?いいんですか?俺、今日は17時には社に帰ってくるんで、18時には上がれます」 「そうか、じゃあ、今日飲みに行こう。前から飲みに連れて行くって約束してたしな。中野さんもどう?今日もし、空いてるなら折角だから一緒に飲みに行かないかな?」 私の顔を二人が覗き込む。 まあ、特別用事があるわけではないから、一緒に飲みに行く事にした。 内心、プライベートの佐藤先輩を少し見てみたかったからだけど・・・。 だって、謎が多いから・・・
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