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「えー?!ビックリしすぎてビックリしすぎてる、、!!」
次の日。茉央にしては珍しく早起きをして、学校に登校するなり件の昨日の話を幸人に説明した。
勿論、教室内では話し辛い内容だし誰かにバレでもしたら職業柄とんでも無い事になるというのは分かっているので空き教室に幸人を連れ込んだのだった。
大まかではあるが、砂野悠理に告白をされた事。それと、土曜日デートに行く事になったことを話すと幸人は暫くフリーズしていた。
そりゃそうだろうなと茉央は思った。茉央自身酷く混乱したし、未だに夢なんじゃないかとさえ思うのだから。
フリーズした後で、語彙力を失ったかのような発言をする幸人に少しだけほっこりしたけれど。
「一目惚れって言われてもいまいち信じられないっていうか……幸みたいな可愛い男子ならまだしも、俺だよ?謎が深すぎる…」
幸人のような可愛い系の小柄童顔男子ならば男が一目惚れするのも頷けるが、自分は可愛い系でもないし小柄でも童顔でもないのにと小首を傾げる。
身長は170cm以上あるし、顔も年相応なのにと茉央は思う。
茉央の言葉に幸人は、やれやれといった様子で溜息を吐いた。
「あのね、前から言ってるけど茉央はハーフで色白美人だし華奢でスタイルもいい。一言で言うなら麗人。だから砂野くんが一目惚れするのも不思議じゃない」
「それは贔屓目すぎない?」
「茉央はもっと自覚するべきだよ!富樫さんだって、クラスメイト達だってみんな茉央の事美人だって思ってると思うけど」
「えー……」
幸人はいつもこうやって茉央の事を大袈裟なくらいに褒めてくれるけれど、茉央はいまいちよくわからなかった。
茉央の容姿は、イギリス出身である父親譲りの繊細な絹糸のような白金の髪。瞳は光彩が美しいアイスグレー。赤く色付いた形の良い控えめな唇はとても艶めかしい。だが本人は無自覚で、ハーフなんて今時珍しいものじゃないしと思っている。
この外見のせいか、子供の頃は割とちやほやされる事も多かったが、今となっては珍しいものでも見るかの様にやや引き気味に遠目で見られるくらいなものでそれ以上でもそれ以下でもない。
それに、どちらかといえば自分より姉の方が美人だと思っている。
茉央の姉は茉央を芸能界に入れた張本人だが、本人は芸能界に入りたい等とは思ったことがないようだった。
芸能人になるより、ファンとして好きなアイドルを追いかけてうはうはしていたいのだと彼女は以前、嬉々として語っていた。
「僕も砂野くんの事はまだよく知らないけど、折角だし土曜日のデートは楽しんできたら?茉央、前から砂野くんの演技好きだって言ってたし友人としてなら嬉しいでしょう?」
「うーん、……まあ、友人としてなら普通に嬉しいかも…」
「でしょ?だからとりあえず恋愛抜きにしてさ、楽しんでおいでよ」
「……そうだね。そうする」
「いつでも話聞くし気軽に楽しんでおいで!さて、そろそろ教室戻ろうか。HR始まっちゃうし」
幸人の言葉に茉央は素直に頷いた。
土曜日は、幸人の言う通りとりあえず楽しむ事にする。茉央は、そう決意した。
今日から4日間はレッスンと合間に2件オーディションが入っているし、きっとあっという間に土曜日になるのだろうなとぼんやり思いながら、2人で空き教室を後にした。
悠理から結局今日は学校に行けなさそうだと連絡がきたのは4限の途中で、明日も微妙かもとの事だったのでLIMEで待ち合わせ場所や時間を決めた。
土曜日の11時に森宿駅前で待ち合わせ。
森宿駅ならば、近くに何でもあるので遊びのネタには事欠かない。
あれだけ混乱して燻っていたくせに、今は少しだけ気持ちが浮ついている自分がいたのだった。
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