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ぼろぼろと。
無意識だ、別に涙腺に命じた訳でもない、涙なんて女の武器みたいで、弱さを見せるようで決して流したくはなかったのに。
彼を思うと、勝手に溢れだしてしまう。
まるで自然現象だ、雨のように。
私は泣いた。
「私は夕に生きて欲しくて、言ってんだよ、怒ってんだよ……」
「……」
「大袈裟だって笑う?馬鹿にする?
じゃあ私に言ってよ、誓ってよ。
今の生活で長生きする自信があるなら、私に言って」
「……」
「……別れよう、って」
「……」
「私は、今のままの夕とは、一緒に生きていけない」
飛び出した。
ドアを乱暴にあけ、無我夢中で階段を駆け下りて。
もしかしたら夕が何か言ってたのかもしれない。
でも自分の激しい呼吸と足音と、
何よりも雨音にかき消されて何も聞こえなかった。
泣きながら走って走って、自分の目から溢れているのが、自分の頬を伝ってるのが、涙なのかそれとも雨なのか。
分からないくらい濡れて、それがなんだか、とても救いになって。
人生で初めて雨に感謝した。
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