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>>PM 8:00
宛もなく歩いて、まあもちろんのこと服はびしょびしょ、靴もびしょびしょ、髪も顔に張り付いて。
道行く人々の視線が痛い。
コソコソと小声で話してる節々から可哀想、なんて単語が何回か聞こえてくる。
まあいい、多分今の私は日本で、割と上位で可哀想なんじゃないかと思う。
こうやって飛び出して走って逃げたって、帰る場所は1つしかなくて、もしかしたら世界で1番愛おしい人から別れを告げられるかもしれない、そんな局面。
なんであんなこと言っちゃったんだろう、今までみたいに我慢してやり過ごしていれば良かったんだ。
そうすればさっきみたいに甘い空気で、夜ご飯どうする?とかこの後何する?とか、雨も止んできたし散歩でもしようか、とか、って…
………あれ、
「……雨、止んでるし」
ゆっくりと顔を上げれば、空を覆っていたはずの雲の切れ目から、陽の光が差し込んでいた。
ついさっきまで自分が放出していた地面にのこる雨に反射して、キラキラと眩しいくらいに輝き出す。
どこまで気まぐれなんだ。
朝から人のことを振り回して、肝心な時に晴れないし、大事な時に夕立を起こして。
どうせ今だってこうやって太陽を覗かせようとして、すぐに雲でおおってしまう癖に。
だけど、その自由さが羨ましくて。
「……う、」
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