キマグレとフキゲン

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どうしようもなく泣けてきた。 声を出さないように口を手で覆って、思わずその場にしゃがみ込む。 私は本当に彼が好きなのだ。 ずっとずっと傍にいたくて、一生一緒に生きていきたくて。 まるで命は自分のためだけにあるかのように、乱暴に生きる彼の姿見るのが辛くて苦しくて。 それでも不器用に生きる姿が愛おしすぎて。 生きてて欲しいの。ただそれだけなの。 自分のためだけとは言わず、私のためにも生きてて欲しいの。 私だってあなたのために生きるから。 それくらい、愛してるの。 ふ、と目の前が暗くなった。 晴れ始めていたのに予感が的中して、また雨雲が頭上に立ち込めたのか、うんざりしながら泣き顔で顔を上げれば。 ───同じように泣きそうな、夕が私を見下ろしていた。 「……晴れてきたし、傘要らなかったな」 「……」 「……帰ろ、織華」 降ってもないのに傘を差す私達は、他人から見てどう写っているのだろう。 酷く滑稽なんだろうな。でもね、きっと私達人様には見せられない顔をしてる。 だからこれでいい、これでいいんだ。 勢いよく立ち上がり、そのままの勢いで夕に抱きつく。 大声で泣き叫びたい感情を抑え、体を震わせ続ける私を、夕がただただ優しく、ゆっくりと、抱き寄せてくれた。
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