160人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしようもなく泣けてきた。
声を出さないように口を手で覆って、思わずその場にしゃがみ込む。
私は本当に彼が好きなのだ。
ずっとずっと傍にいたくて、一生一緒に生きていきたくて。
まるで命は自分のためだけにあるかのように、乱暴に生きる彼の姿見るのが辛くて苦しくて。
それでも不器用に生きる姿が愛おしすぎて。
生きてて欲しいの。ただそれだけなの。
自分のためだけとは言わず、私のためにも生きてて欲しいの。
私だってあなたのために生きるから。
それくらい、愛してるの。
ふ、と目の前が暗くなった。
晴れ始めていたのに予感が的中して、また雨雲が頭上に立ち込めたのか、うんざりしながら泣き顔で顔を上げれば。
───同じように泣きそうな、夕が私を見下ろしていた。
「……晴れてきたし、傘要らなかったな」
「……」
「……帰ろ、織華」
降ってもないのに傘を差す私達は、他人から見てどう写っているのだろう。
酷く滑稽なんだろうな。でもね、きっと私達人様には見せられない顔をしてる。
だからこれでいい、これでいいんだ。
勢いよく立ち上がり、そのままの勢いで夕に抱きつく。
大声で泣き叫びたい感情を抑え、体を震わせ続ける私を、夕がただただ優しく、ゆっくりと、抱き寄せてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!