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>>PM 9:00
扉を閉めた瞬間、すぐに夕に体を壁に押し付けられ、激しく唇を奪われる。
靴すら脱いでないし、上手く立て掛けられていなかった傘が倒れる音が遠くで聞こえた気がした。
乾ききってない服が肌に張り付いて気持ち悪い、濡れている髪がまとわりついて不快感を煽る。
体だって濡れたままだから、少し肌寒いはずなのに。
触れ合っている場所から徐々に熱が上がっていく。激しく息をしながら、苦しくて呼吸も出来なくなってるのに、キスを続ける、お互いに求めて貪って。
はあはあ、と肩で息をし、生理的な涙が浮かんだ瞳で彼を薄く見つめると、何を考えてるのか分からないくらい澄んでいる双眸が私をじっと見つめた。
「……織華」
「……」
「……俺と別れたい?」
「……」
ただ黙って彼を殴った。割と力を込めて拳を彼の頭に当てた。「いて、」と軽く声を上げ、夕は私を見返して、切なげに顔を歪めた。
「……泣くなよ、織華」
「……別れられるならっ、」
「……」
「とっくの前にそうしてる!どうせ言う事聞かないし、私の思い通りにはならないの分かってるし!……自分の事を大事に出来ない人が、私の事も大事にできるなんて思わないもん!」
「……」
「……なのに、」
「……」
「離れられないから、こうしてまた帰ってきちゃったの分かってるくせに……」
そんなこと聞かないでよ、と無理やり絞り出した声とともに、彼をまた殴った。
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