すうがくなあさ

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「喜んでくれるかと思って」 「ちなみに聞くけどその声の主って」 「もちろん私」 「……」 「一昨日した人が、なんかごそごそしてると思ったら、声録音してたの!信じられる!? もー、ぶん殴って警察呼んでやるって脅して、スマホ奪ってぶっ壊してやった!!」 「で、なぜそのデータが高嶺のスマホに?」 「自分のそういう時の声って気にならない? だからこっそり送ったんだけど、演技が凄くて笑っちゃった。全然気持ちくなかったんだよね」 「……」 「なあんだ、昴くん、喜んでくれると思ったのになあ。いつも勉強教えてくれてるお礼にって。全然興奮しなかった?」 「興奮はした。だから集中できなかった」 「え?」 「強いていえば、映像が加わればなお良かった」 でもほら、と高嶺のノートを指さすと、彼女は辿る方向に目を向け、そうしてから俺を見上げ、てへっとばかりに笑みを見せる。 「今日のノルマ全然終わってない」 「バレたか〜」 「高嶺、数学苦手だっけ?」 「うん……てか理系科目がきらい」 「じゃ、明日は古典にしよ。今日はいいもの聞かせてくれたからここまでで良し」 「きゃー、やったー」 「あとさ、それ他の男に聞かせんなよ。 危ないから」 「……、」 教科書とノートを重ねて、トントンと整える。表紙の白が太陽に反射してやけに眩しいから目を細めれば、ふと、俺をしっとりした眼差しで見る高嶺と目が合った。
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