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「お味はいかがでしたか?」
「……ムミ」
「でしょうねえ」
「……馬鹿にしてんだろ」
「ううん。可愛いなあって思って」
私がもうとっくに無くしてしまった。
素直で、純粋で。
例えば綺麗なものを間違いなく綺麗と言える、そんな子供のような澄んだ心。
だから好きになった。
大きな目が私をじっと見つめる。
そこに移る雪を見て、ああ、彼の瞳もまるで今の空のようだと。
「……口の中がまじで冷たい」
「そりゃそうだ」
「……だから、ちょーだい」
「……え、」
「おまえの体温」
意味を理解する前に頬を両手で包まれて、引き寄せられる。
───本当に冷たかった。
その唇の温度差に一瞬ビクリと体が震えたけど、離れることは許さないとばかりに、なおも深く口づけられる。
私は温度を与えて、彼は温度を奪って。
徐々に2人の温度が同じになっていく感覚、とても言葉には言い表せない。
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