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The taste of snow
「……なにやってるの?」
「雪食ってる」
突然上を向いて口を開け始める彼に、つられて私も空を見上げる。
真っ黒な空間から一体どこから現れたの、て言いたいくらい、何にも染まらない白。
音もなく、静かに、ゆっくりゆっくり私達に降り注ぐ。
「……ねえ、雪って汚いんだよ。
ただの水蒸気なんだよ」
「知ってるよ」
「お腹壊すよ」
「でもなんか美味そうだから」
「……」
「甘そうじゃん」
全く共感できないその答えには何も答えず、ただ黙って彼を見つめる。
傘もささないから。
ふわふわと癖の強い髪の毛には、細かい雪の結晶。
その横顔は真っ直ぐ空だけを見つめ、瞳のあまりの純粋さに思わず逸らしてしまいたくなる。
息をする度に上がっていく白い息が、たまに雪を溶かしていく。
「……さむ、」
ぶるりと身体を震わせ、近づいてくる彼を傘の中へと誘った。
「ほら、雪が顔にすごいかかってる」
私の手だってそんな暖かくはないけど、彼よりはマシだろう、そう思って髪の毛や頬や鼻の頭についた雪を優しくはらう。
彼が瞬きする度落ちていく雪が、睫毛の長さを物語っている。
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