跡取り息子はいまどこに

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跡取り息子はいまどこに

 この世に同じ人間が二人いる、ということはあり得るだろうか──。双子、というのはもっとも可能性が高いが、それとて同じ遺伝子を持ってはいるも同一人物ではない。生まれたときから現在までの経験の記憶がすべて同じ、というのはあり得ない。  あり得ないが……。  とある雑居ビルの三階に事務所をかまえる興信所「新・土井エージェント」の、ブラインドのかかった窓際に置かれた会議テーブルで、二人の探偵が打ち合わせをしていた。  一人は、なぜか紫のシャツに赤いネクタイを締め白の上下のスーツに白のソフト帽をかぶった、明らかに事務所内でも浮いた服装の中年男……先野光介(さきのこうすけ)、三十八歳、独身。  そしてもう一人は、細身の体に紺のブレザーを羽織ったパンツスタイルが似合う三条愛美(さんじょうまなみ)、二十七歳、こちらも独身である。  二人はホワイトボードに箇条書きされたメモを見ながら検討を重ねていた。
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