はじまり

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ひとめぼれの初恋(はつこい)をするまで、わたしには「好き」なものが沢山(たくさん)あった。 ママ パパ お兄ちゃん いちご マーマレード入りヨーグルト ママのオムライス 睦月(むつき) ななちゃん 桐島先生(きりしませんせい) 漫画(まんが)のキャラのリード君 (かれ)への「好き」はその中のどれとも(ちが)っていた。 好きなのに一緒(いっしょ)にいても(うれ)しいだけじゃなくて (こころ)(おく)がギュッとなる感じ こんな気持ちを「(せつ)ない」っていうのかな 気づいたら(かれ)のことを見ていた。 休憩時間(きゅうけいじかん)、男子が校庭(こうてい)(あそ)んでいる。たくさんいる男子の中からすぐに彼を見つけられた。 彼にだけスポットライトが当たってるみたいに見える。 ふしぎだった。 彼の声もすぐに分かった。 教室で(とも)だちと話をしてても、ろう下で彼の声がするとわたしはこっそり教室の入り口をみる。 じつは時々(ときどき)彼と目が合う。それがまたうれしくて、心の中でいつもガッツポーズをしていた。 ちょっとでも姿(すがた)が見たくて、放課後(ほうかご)彼がよく(あそ)公園(こうえん)(とお)りかかってみたりもした。 今までのわたしとは(ちが)うわたし。 今までどんなふうに()ごしてたかもう分からないけど、なんとなく、あの日を(さかい)に変わった気がしてる。
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