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プロローグ
この世界に神様がいるのなら、きっと今は怠けているのだろう。体調を崩したのか、神様同士で揉めているのか。いずれにせよ、任務を果たせていない神様がいるはずだ。
そうでなきゃ、こんな不平等などあり得ない。
「数十年以内にこの地球上に生活することはできなくなる」
そんな緊急ニュースがテレビで放送されたのは、三年前の春の終わり、僕が高校一年生の時だった。そのニュースによれば、温暖化含めた異常気象に加えて、地震や火山噴火などの自然災害が連続的に起こることが予測されているそうだ。
「そんなもん信じられるか」
多くの一般市民がそう思った。僕もそうだった。下らない予言みたいなものだろうと思ったし、そんなことを緊急ニュースで流すことに理解ができなかった。しかし、事態はもっと深刻だった。
大分前から月への移住計画は進行していて、既に人間の住む環境が整いつつあるらしかった。そして、人類は順に月へと移動を始めた。世界各国から定められた数だけ選ばれた人間が毎年、地下での訓練を経て月へ行くことになったのだ。
これから話すのは、こんな世界で過ごした僕の高校生活最後の一年。彼女と出会い、彼らと励まし合った、生き残りを懸けた青春の一ページ。
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