キラーワード

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「神田首相、ありがとうございます。」か。 国民からのファンレターのような手紙を読み、私は恍惚のため息をつく。 私がこんな風に国民からの「偉大な支持と敬意」を受けるようになったのはある事がきっかけである。 「占い」だ。 大学入学してすぐ、理想と現実の大きな差に愕然とした。 何をする気にもならず、夜の町を彷徨っていた。 その時、路上で占いをしている女性がいた。 ・・・うさんくさい。 そう思ったが、暇だったので占ってもらう事にしてみた。 「あなた、今すごく揺らめいている。」 その通りだ。 「周りの人から言われる自分の姿と、心の中にいる自分の姿とのギャップに、苦しみを感じる事は無い?」 ある!あります! 「あなたは大きな力を秘めている。でも、それにあなた自身が気がついていない。もったいないわ・・・。」 もったいない?大きな力?何それ? 「もっと自信を持っていい。政治家になりなさい。」 へ?政治家? 「あなたは国の仕組みを大きく変えるパワーがある。」 そう言って占い師は私の手をギュッと握った。 「私のオーラを分けましょう。」 そう言うと占い師は私の目を見た。 そこで初めて占い師の顔をちゃんと見た。 ーーーきれいな、女性だった。 先ず、手が温かくなっていき、だんだん体が熱く火照ってきた。 なんだ、この感じ。 今までにない体験だった。 すると女性が一人の名刺を差し出した。 「この人に『政治家になりたい』と連絡しなさい。」 それは某政治家だった。 私はすぐに連絡し、その政治家が開く政治塾に通った。 改革に悩むと、占い師の女性の元へ通った。 その助言を元に改革を進め、法案を通していった。 彼女には非常に感謝している。 感謝だけじゃない。 私は彼女を愛している。 すべて言うとおりにすれば、彼女は私と結婚する、と約束してくれた。 あと、もう少し。 もう少しで、きっと彼女は私の人生の伴侶になってくれるはずだ。 きっと、誰も信じないであろう。 でも、これがすべての真実だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加